福岡の社会保険労務士法人プロフェス

Ａ社の毎月の歩合給の割合を２０％に抑え、職種と階層別の役割基準を明確化し、コンピテンシー評価を参考にした役割に応じたプロセス評価を重視する評価基準を導入。特にＡ社で大切にしたいバリューを全社員に出してもらいプロセス評価の中にバリュー評価を併用する。
自社のモデル賃金を設計し、役割基準に応じた期待以上の評価を得れば安定した給与月額を確保できるようになり安定した組織運営ができるようになった。

買収先Ｂの賃金分析をすると全体的に給与水準が高いわけではなく５０歳以上の役職者が高額で２０代、３０代の職員は昇給０の状態が続いており周囲の医療法人と若年層給与の格差がでていた。自社モデル賃金を設計し中だるみが生じていた若年層は昇給、昇格、５０歳以上の役職者は役職定年制度を導入し、中間クラスへ役職委譲、６０歳以上職員は嘱託職員給与制度を策定し随時移行させる。また目標管理制度及びコンピテンシー評価を導入し評価に応じて数年に渡り給与水準の収れんを図った。

十年前にハローワークに出した求人票の６０歳定年を根拠に６０歳定年時の退職金額を算出しＡ本人に説明し同意書をもらい退職金を支払った。他の社員に対しては６０歳定年を６５歳定年まで延長し雇用の継続は図るが退職金額は６０歳で乗率を停止する。しかし６０歳時点の最終役職で退職金額が上下する別テーブル方式の役職別退職金制度を導入し貢献度に応じた退職金制度により社員の納得感を図る。

Ｂ社は１年単位の変形労働時間制を導入していたが実際は年間カレンダーどおりに勤務しておらず、定額の営業手当のみの支給であった。タイムカードは毎日２時間の残業があったが、残業手当の支払い実績はなくＢ社の顧問社労士は営業手当が時間外であると主張する。定額残業代の最高裁判例では何時間分の残業代なのか、従業員に就業規則、雇用契約書などで周知していたのか、定額残業分を超過する残業代は支払っていたのか確認がとれないため偶発債務とみなし未消化有給休暇とあわせ５０００万円の債務を計上しＡ社にデューデリジェンス報告書を提出した。Ａ社は社労士が作成した報告書に基づき既存の買収額から３０００万円を値引きさせ、支払いを６ヵ月猶予させることにした。

法律と法律ではない部分を明確にするため就業規則の改訂を提案し、年次有給休暇については計画年休を導入しＡ社の消化率は向上した。また従業員全員からＡ社従業員として守らなければならない服務規律を具体的に列記してもらいＡ社のオーダーメイド就業規則が完成した。
完成後は、各営業所で社労士が講師の就業規則説明会を実施し従業員に確認印をもらう。Ａ社では法律である労働基準法で守らなければならないことと法律で定められていないハウスルールの境界線が明確になり権利と義務を意識するようになった。また服務規律も自分達で決めた服務のルールなので順守しようという意識も全体に浸透した。

社労士は、看護師などの専門職は人材獲得競争が激しいため夜勤、昼勤など自由に移行できる制度の導入が不可欠である旨を説明した。他の医療法人では、夜勤看護師、昼勤看護師ごとの給与表を作成しているところもあるが給与表まで開示する法人はなくトラブルの発端となる。そこで給与体系を夜勤、昼勤看護師の区別なく基本給のスタートは同一で
1週間に1回の夜勤に入れる看護師のみ手当を10,000円付けるようにし夜勤看護師と昼勤看護師の差をつける制度を導入した。それ以来、これまで退職するか続けるかの選択肢のみであったが、手当が付いたり外れたり（降給や減給ではない）するというイメージになり、育児・介護など諸事情により夜勤から昼勤、昼勤から夜勤へ自由に制度移行でき専門職の退職率が低下した。

ヘッドハンティング会社数社からの紹介で中途入社した３名の特殊能力型社員は前職の年収をベースにＡ社での年収及び月額給与を決定していた。ある日所轄の労働基準監督署の定期調査を受け労働基準監督官に３名の特殊能力型社員の未払い残業を３ヵ月分支払うよう是正勧告を受けた。Ａ社の総務部長は監督官に対して３名は専門型裁量労働時間制の適用者である旨を主張したが当然ながら監督官は認めなかった。

監督署の是正勧告以降、その３名に対して正規の時間外割増賃金を支払うと２倍の月額給与となり企業収益を圧迫し、周囲の一般社員もただでさえ高い年収をもらっている３名が更に２倍の給与を貰うことに不平不満を感じていた。

そこで当事務所に相談があり社労士がＡ社の給与体系及び労働時間を分析するとＡ社社長が一般社員はＡ社の給与表、中途採用の特殊能力型社員は前職の時間外労働・休日労働手当て込みの年収で給与額を決定していたことが判明した。
また６カ月間の時間外の平均データをとると一般社員は月平均１０時間、特殊能力型社員は月平均４５時間の時間外労働を常に行っていることが分かり一般社員は月１０時間、特殊能力型社員は月４５時間の定額残業手当を支給するよう決定した。

ただし、特殊能力型社員についてはＡ社での年収決定時に前職の時間外労働・休日労働手当てが含まれていた金額だったのを鑑み、既存の月額給与の中から月４５時間分の定額残業手当分を算出し、労働条件の不利益変更となるため３名には個別の給与体系変更に関する同意書をもらうようにした。

Ａ社社長は二度とこのような事態が生じないよう定額残業手当を加えた新給与表の作成を社労士に依頼し、これ以降は中途採用者に対して給与総額を決定すると新基本給及び定額残業手当が自動的に決まるようにした。
月４５時間を超える時間外は支払う旨を説明する反面、過重労働防止のため時間外・休日労働の許可申請書の厳格な運用を義務づけるようになって再び人件費のコントロールを可能とした。